バークリー予防歯科の概要:215

歯科医師・山田忠生

 

この調査結果は歯科医学にとって恥ずべきものである一方、患者にとっては悲惨なものである。このような人々が生涯直面していかざるを得ない問題は、ある場合にはほとんど耐え難いものでさえある。無歯顎の患者が義歯を固定しようと購入している義歯粘着剤は、年間にして数百万ドルにも上がっている。この義歯粘着剤のコマーシャルは1年中、あらゆるメディアに乗って流され、夜のテレビを見ると人の指にくっついたエンピツや、目の前に提供された食事を歯がないために食べられず、ベビー用の椅子に座らされている大人のスポットがでてくる。義歯を装着している人々が直面している困難は非常にきびしく、彼らは藁をもつかむ心境なのである。ただし、歯科医師が彼らにじっくりと考えさせて、抜歯をしたくないと思わせていたのなら、何百万人という人々が歯をすべて抜いてしまうという決断は避けられたに違いないのである。さらに、歯科医師が歯内療法学的、および歯周病学的に治療が可能な歯を抜くことを拒んでいたならば、無歯顎という致命的な状態になった人は、ごく少数になったであろう。

 

 

シュースター「卓越歯科医業学」:214

歯科医師・山田忠生

 

誰も待つのは嫌いである

誰でも、どのような理由であっても、誰かのリストに自分の名前が掲載されることは好まない。そこで、私は受付にはこのように話すように教育した。「シュースター先生はこの時期に幾人かの患者さんの治療を終えるようですので、数週間以内にあなたの診査のために出会うことになります。」日付欄の左側に、患者に電話をした日にちを記載して、日付斜線の右側には患者に再び電話をすると話した日程を書く。このリストはコントロールされ、監視しておかなければならない。患者は、それがコントロールされているからこそ待つのである。その管理がいい加減なものであれば、患者は待ってくれないだろう。これを監視していくには優秀な受付を必要とするが、この医業のタイプの価値を受付とコミュニケートする責任が歯科医師にある。それは、――あらゆる面からも異なっており、異なったアプローチをしなければならない。そうでなければ、あなたの患者は1か月から数週間に渡って予約されていき、診ていない患者が増え、スケジュールはすし詰め状態となる。どのような単独な理由であっても、これほどに医業が確立されまいままに破壊されることはない。

 

 

 

咬合病の診断と管理:4

歯科医師・山田忠生

 

毎日のように、咬合病を原因とする歯のダメージの治療を求めている患者は診療所を訪れるが、患者、そして歯科医師でさえもほとんど真の敵についてわかっていない。直接的であれ間接的であれ、修復物は破損され得るものであれ、それは咬合病の結果として、ときには病因についての認識がないままに、莫大なコストをかけて修理、再装着されねばならない。また、研究によれば急速に進行する局所的な歯周組織の破壊、動揺、早期の歯の喪失は、咬合病(咬合性外傷)に起因していることを明らかにしている。筋肉痛と顎関節機能障害(TMD)は、認識されないままに治療されていない咬合病の徴候と症状である。

歯科医師は毎日のように咬合病を治療しているが、通常、それ程に診断はしていない。そのため患者は咬合状態が自分の歯科的健康に脅威となるものとして、あるいは注目をするべき病気とは思っていない、――つまり摩耗の途中経過であるか、加齢によるものと思っているのである。咬合病はそれらの咬合状態をを称するもので、さらに状態は緊急度を増し、それが加齢や自然な摩耗ではなく、むしろ治療が必要なきびしい病気であるということを、患者が理解する手助けとなる。

 

 

パンキー歯科診業哲理:265

歯科医師・山田忠生

 

第5章 あなたの知識を適応しなさい

 

プロフェショナリズムとは優れた知識、配慮、そして判断の使用に伴う行為の特質であり、それは利己主義の考えに先立って、他者や社会に利益に方向づいたものである。

l.D.パンキー

 

患者が一般的な治療を受けようとするのか、――あるいは自分の歯科的健康への責任を持とうとするかは、専門家としての能力や高品質の治療を提供する技術にあるのではなく、そのような処置の必要性や重要性をコミュニケートする歯科医師の技術によっているのである。

ローレン・ミラー

 

 

マークス「完全歯科医業学」:348

歯科医師・山田忠生

 

18ー4 要約

患者教育は治療中も継続していかなくてはならない。

患者が、(完全に)治療中に落伍をする必然的な理由にはその地域からの転居、あるいは死亡しかないので、歯科医師は治療期間中のどのような中断についても徹底して調べなくてはならない。

落伍をしてしまう最も頻度の高い理由は、興味の喪失である。

1・各来院時の初めに予定されている治療、その目的、完全な計画との関連性について話し、治療中の危険性を説明、期待できる効果について指摘する。

2・各来院の最後に、実施された治療と、治療後の危険性について簡潔に見直し、家庭管理を指導し、次回来院の治療について説明する。

3・治療の各段階の完了ごとに、患者にそのことを知らせ、将来の危険性について再確認する。

 

 

 

デンタル・コミュニケーション:112

歯科医師・山田忠生

 

「なぜ」という質問には、「なぜなら」という返事になる。私たちはいつも、自分の行動を意識しながら行っているとは言えないのであるから、「なぜなら」という返事は、まず常識的なものでしかない。つまり、それは口実や言い訳であり、専門用語では”合理化”である。合理化については関心をもっている人もいるが、専門職業上のインタビューや、相互関係にはほとんど価値のないものである。

「なぜ」という質問に代わるものとしては、以下のように患者に話しかけることである。「はっきりとしないのですが…」、あるいは「状況がよく呑み込めないのですが、もう少しお話をしていただけますか」。このような問いかけは患者を刺激することなく、反感を抱かせることもない。つまり、患者への関心や支持の姿勢を表していることになる。合理化を引き起こすかもしれないが、直接的な「なぜ」という質問に比べて、患者は防御姿勢をとることは少ないはずである。

 

 

咬合病の診断と管理:3

歯科医師・山田忠生

 

咬合病

審美的な修復が、短期間しか保持できない大きな一つの理由は咬合病である。病気として明らかなことは感染、生来の弱さ、あるいは正常な生理的機能を減じるような環境ストレスなどの結果としての、異常な組織の状態であるということである。咬合病は、まったくこのようなことと合致している。何百万ドルもの金額が、毎年のように歯頚部の摩耗と知覚過敏の治療のために使われているが、ほとんど咬合病と認識されていない。過度な歯頚部の知覚過敏と、歯頚部の摩耗(楔状欠損)は咬合病からのダメージである。適切な考えをもつことなく、しばしば修復物で治療されている。

咬合性外傷(咬合病の一つ)は過度な知覚過敏と激痛の主要な原因である、という証拠が事実を指摘している。何百万というⅤ級の修復が、適切な診断か問題の原因ーつまり咬合病を治療するということではなく、毎年のように歯頚部の楔状欠損として処置をされている。臨床的な経験と証拠とが、この歯頚部の欠損と咬合性外傷との関係を示している。

 

 

シュースター「卓越歯科医業学」:213

歯科医師・山田忠生

 

2週間以上先まで新患者を登録してしまうことは、行わない方がよい。2回目の予約(コンサルテーションと相談のための時間)は、1回目予約から10日以内にしたいものである。あまり先までスケジュールを決めてしまうと、新患者を診なければならなくなった場合に、融通がきかなくなってしまう。この方法であれば1回目予約と2回目予約の間が、それほど長く空き過ぎるということはない。

 

新患者の再診療計画表は、ある週は新患者で手一杯だが、次の週は一人もいないということにはならないようにとの着想から作られている。仕事のバランスを保ち、あなたとスタッフが新患者治療に対して、新鮮な気持ちですぐに応じることができるような助けとなる。

 

 

バークリー予防歯科医業の概要:214

歯科医師・山田忠生

 

治療は歯科医師にとっては容易で患者にとっては経済的であり、どちらにとっても好結果を期待することができる。患者ではなく歯科医師が抜歯の必要な時期を決める必須歯内療法学は、現在私たちが直面している切実な問題に対処するための最も近道である。

アメリカ歯科医師会雑誌に掲載された1969年の歯科医学の収穫は、アメリカ人から抜歯された5,600万本もの歯であったという不名誉な調査結果が証しとなっている。およその見当では3.500万人のアメリカ人が、最低一つは義歯を装着している。しかし、歯科医療保険がさらに状況を悪化させているという、寒気がするような実態がその問題をさらに深刻にしている。この数字は不必要な抜歯が道徳的ではないと見なされるようにならない限り、急速に跳ね上がっていかないのである。