デンタル・コミュニケーション:117

歯科医師・山田忠生

 

原則としては、患者からの個人的な質問に対して誠実に、率直に答えるべきである。しかし、患者の意図をあなたが明確に理解していること、そして将来にわたって専門家としてのあなたとの良い関係が、維持できる場合に限るのである。

質問:「あなたは民主党員ですか。」とか、「あなたはバプテストですか。」というような質問には、どのように答えるべきか。

回答:このような質問は、患者のするべきものではない。あなたの返事としては、これらを話題にすることは少しも患者を管理する上で役立つものではない、ということを表現したものでなくてはならない。あなたの返事を、以下と比較せよ。

 ●あなたがそのような質問をされることは興味深いことではありますが、私が知りたいと考えますのは、なぜご質問をされるのかということなのです。

 ●私があなたを援助することは、そのことで差がつくようなことには思えませんが。

質問:患者から「いえ、あなたがどのように投票されるのか、少し気になったものですから。」という返事があったとき、あなたの返答はどうか。

回答:以下を、あなたの返事と比較せよ。

 ●そのことが、あなたの問題の解決に役立つようには思われませんが。

 

 

咬合病の診断と管理:7

歯科医師・山田忠生

 

DFEDフォーム(図6)は、歯ー顔面審美に関する25項目を系統立てて評価をするために写真図面を使用する。このシステムの最重要部分というのは、その状態の病因についての評価や診断であり、それは危険性/管理ボックス(コーナー)に、そして治療が始まる前に危険性の管理へと誘導することである。(図6)危険性が咬合病と関連しているのであれば、咬合・顎関節フォーム(図7)を使用することが求められる。それはさらに一層の診断と管理をするために効果的で、完全な臨床的咬合評価を臨床医師が行うのに役立つのである。

DFEDが完成した後、最終的な治療の提示と、結果に関する説明をうけるために改めてアポイントメントをする。写真、装着された模型を使用することで、咬合病の徴候や症状、つまりクレンチングと機能包絡線の妨げを容易に説明できる。(図8)治療としては咬合調整、定期的な咬合の修正、そして咬合ガードが勧められた。

 

 

70歳からの歯科治療ー2

歯科医師・山田忠生

 

最新のデータによれば、図表1にありますように70歳で歯数は約20本、つまりすでに8本の歯を何らかの理由で失っているということであります。もちろん、これは平均ですので28歯すべてをもっている人もあれば、私の経験からも28歯すべてを失っている人もいます。

歯の喪失数が増加するにつれて、さまざまな支障、障害が生じてきます。噛みにくい、話しにくいなど生活上で、それまでは平気であったことができなくなる、それにつれて制約をうけ人とのおつき合いなど、つき合う世界が狭くなってきたと思う。

そのような人々への少しでもお役に立てればと、50年以上の歯科臨床経験から得た知識を提供することにしました。できるだけ絵空事ではなく、私の診療経験に基づいた知識を提供します。

なお、図表は私のオリジナルもありますが、ネット上で適切な図表を検索し利用させていただいております。無断での使用ではありますが、ご容赦ください。

 

シュースター「卓越歯科医業学」:218

歯科医師・山田忠生

 

治療予約と診査予約

1.新患者は5時限の予約時間をとり、教えるべき診療哲学を書面で伝え、治療前の問診や診療録と、歯根膜の診療後、口腔全体のレントゲン写真、パノラマレントゲン、スタディモデル、それに咬合記録をとる。患者は病歴調査票を受け取り、帰宅後に書き込み。送り返す。

2.2回目の予約は1時間の予定で、2回目の診査と食事には十分注意しなくてはならないとの話し合いをする。

3.月曜日…水曜日…金曜日の午前――青で塗った時間(形成の時間)

  月曜日…水曜日…金曜日の午後――緑でむった時間(セメント合着の時間)

  黄色の時間――少なくとも週に4日の午前と、いずれかの日の終了時間に診療会議を開催する。

 残った火曜日と木曜日は咬合調整、修復治療、保存治療、治療計画に充てる。

 

 

 

 

 

マークス「完全歯科医業学」:352

歯科医師・山田忠生

 

郵送物だけでは、行動を促すには十分ではない。そして、”それ以上に追求しない”歯科医師は、患者を失望させることになる。つまりは粗略な扱いをした結果について、それを理解し、予知することができるのは専門家としての歯科医師なのである。歯科医師は主張を貫き、患者をそのことから守らなければならない――しかも、その主張の方法は患者に受け入れられなければならない。さもなければ、”売ろうとしているためだけの仕掛け”だと疑われるかもしれない。

患者には心の準備をさせ、一つの様式でつくられているアプローチを受け入れさせなければならない。これは患者が再来院する現実の動機を提供するものである。治療の最大の目的は、患者を主要な予後の危険性から守ることであった。治療計画を計画し、提示することには将来の危険性が含まれていた。これらのことがリコールの目的であり、そのためには患者に再来院を促せるように整理して、提供しなければならない。

 

 

バークリー予防歯科の概要:217

歯科医師・山田忠生

 

歯科医学はどのようにして、今のような誤った道に入り込んでしまったのだろうか。歯科医師は革新的でありたがる不道徳で、無情な人間なのだろうか。あるいは、彼らは単に受けてきた教育や、研修の犠牲者に過ぎないのだろうか。その答えは、後者に深いかかわりがあるようである。合衆国内の大学の、ほとんどの卒業生は研修期間中に受けた歯内療法学はわずかでしかなかったと感じており、彼らが大学で抜いた治療可能な歯の数は、根管処置を施した歯と比べると圧倒的に多いのである。加えて、彼らが学んだ歯内療法学の方法は、非常に期待を裏切るものであり、時間の浪費でもあったため、ぎっしりと詰まったアポイントメント・ブックに組み入れることに非常に苦心しているのである。

著者は卒業後、臼歯の歯内療法にはアレルギーであったので、7年間は前歯か、ときどきは丈夫でなっ直ぐな小臼歯のみに歯内療法を行った。抜歯と歯内療法の割合は10対1以上で、学生時代のそれと類似していた。大学では、歯周組織はかなり良好な状態にあっても、膿瘍のできた歯は抜いてしまうように徹底的に教え込まれていたのであった。

 

 

マークス「完全歯科医業学」:351

歯科医師・山田忠生

 

効果を上げるために、歯科疾患を最適にコントロールするよう設定されたプログラムに含まれるのは、適切な時期に実施する定期的な再診査があり、そしてリコールに応答することの重要性が患者に印象付けられるが、それだけでは十分ではない。歯科疾患に対して警告するものとして、自然のシステムは有効ではない。「私の歯は痛くなったことはありません。ですから、問題もありません。」と患者は悦に入って話す。当初の患者教育の中で、そして治療中にも歯は痛みを感じることなくカリエスに罹患している可能性のあること、歯周疾患は不快感もなく進行し得ることについて、患者に話してはいるが、数か月後にもその印象が鮮明であることは期待できない。

 

 

パンキー歯科診業哲理:268

歯科医師・山田忠生

 

この章の目的は、あなたがすべての患者との間に長期的な人間関係を確立できるようにすることであり、そのようにしていく中で、患者が生涯を通してすべての歯を維持していくよう援助できるようにすることである。そして、あなたのオフィスのための、さらには歯科医学のための伝道者をつくることである。ビジネス用語でいえば、私たちが展開しようとしていることはマーケティングである。

Dr.パンキーは、マーケティングをこのように定義づけている。つまり、患者の必要性と欲望を明らかにして理解するとともに、私たちの提供するサービスについてはっきりとコミュニケートし、患者がそのサービスを望み、手に入れようとすることである。私たちが望むことは、信頼に基づいた人間関係を構築することである。最初に、私たちは自分の配慮、技量、判断を販売し、マーケティングする。そして、最後に患者が私たちを信頼するのである。

 

 

シュースター「卓越歯科医業学」:217

歯科医師・山田忠生

 

時間調整・・・優先予約

仕事の効率を増すためには、何をしたいのか、そして何をしたくないのかを明白にさせることが大切である。それを書き出して、スタッフと分け合うことも効果的だろう。

 

新患者の再診

時間調整は新患者の流れを調節し、治療や技工の状態を監督するために使う。左側に書かれた日付を除けば、あとは自分でわかっていることなので説明はいらない。左側には患者に連絡した日を示し、右側には受付が診査のために患者に再び来院してもらう日を記入するように分かれている。診査の日が遅れそうな場合は、受付は右側の日付を変更する。調整表そのものはどれも”コントロールされている”という本質的な特徴をもっている。

 

 

デンタル・コミュニケーション:116

歯科医師・山田忠生

患者の質問

患者が質問をするのには様々な理由がある。患者のデータを収集しているときに、患者が質問をしてくる場合は情報を求めてのことではない。その理由が、いつも明確なものであるとは限らないのである。

質問:「結婚されていますか。子どもさんは。」というような質問には、あなたならどう返事するか。

  A.単に知りたいと思って聞いていると思われる場合には。

  B.専門家としてのあなたとの関係を、うまくやっていこうとして意識的に聞いていると思われる場合には。

回答:

  A.単純に率直に、そして誠実に「はい」、もしくは「いいえ」と答えるのが適切である。思うに歯科の専門家であるあなたに対して、理想的な人間であるよりは、現実的な人として知りたいと考えているのである。あなたの予想通りであれば、知ってしまえば話題は他に移るであろう。

  B.「なぜ、お知りになりたいのですか。」と、あまり強い語調ではなく尋ねるのが、どのような場合でも安全な方法である。この場合には患者は専門家との関係を越えて、一層親密で打ち解けた、社交的な関係にしようと考えていると予測できる。「はい」と答えようものなら、もっと個人的な質問「奥様は、お幸せですか」とか、「あなたと結婚されて、どう感じておられますか」などの質問が続くのである。これでは全く専門家との関係ではない話に進んでしまうことになる。このような問題が生じないようにしなくてはいけない。最終的には個人的な関係に陥ってしまうようなことになる。このような立場をとれば、あなたの評価はなれなれしく、ずうずうしい、そして人の気を引こうとするような歯科医師であるということになってしまう。