歯科医師・山田忠生
この調査結果は歯科医学にとって恥ずべきものである一方、患者にとっては悲惨なものである。このような人々が生涯直面していかざるを得ない問題は、ある場合にはほとんど耐え難いものでさえある。無歯顎の患者が義歯を固定しようと購入している義歯粘着剤は、年間にして数百万ドルにも上がっている。この義歯粘着剤のコマーシャルは1年中、あらゆるメディアに乗って流され、夜のテレビを見ると人の指にくっついたエンピツや、目の前に提供された食事を歯がないために食べられず、ベビー用の椅子に座らされている大人のスポットがでてくる。義歯を装着している人々が直面している困難は非常にきびしく、彼らは藁をもつかむ心境なのである。ただし、歯科医師が彼らにじっくりと考えさせて、抜歯をしたくないと思わせていたのなら、何百万人という人々が歯をすべて抜いてしまうという決断は避けられたに違いないのである。さらに、歯科医師が歯内療法学的、および歯周病学的に治療が可能な歯を抜くことを拒んでいたならば、無歯顎という致命的な状態になった人は、ごく少数になったであろう。