歯科医師・山田忠生
著者は早速、膿瘍のできた歯の治療に来院してきた患者に話した。「あなたの歯には膿瘍ができています。かつてはこのような歯は抜いてしまわなければいけないとされていました。しかし、今はそうではありません。新しい治療法があります。」その治療法が30~40年も古いものであることを知っている患者はなく、進んだ技法だと思い込んでいた。著者は、さらに続けた。「私はこの方法を学んだばかりですが、ぜひあなたに治療して差し上げたいのです。かりに最悪の事態になったとすれば、そこで歯を抜いてしまえば良いわけです。それに報告では治療した後の歯は、とても経過が良いとされています。あなたの歯を守られるかどうかは50%ですが、どうされますか。」初めの18人の中で、拒んだ人はいなかった。誰もが自分の歯を保持したいと思っているのである。著者にとってもこれは決して忘れることのできない、貴重な教訓なのである。