歯科医師・山田忠生
一度、親が基本となる概念と、子どものかかっている歯科医師の目指している目標とに共感しさえすれば、無理に知識を詰め込む必要などないのである。事実、親に必要なのは歯科医師(あるいは診療所、協会)の示す興味に、自分も興味を感じることなのである。親がこの時点でこれまでの知識を再考するようにさえなれば(つまり、彼らの考えを理知的なものとする)、見込みのある長期の関係も生まれてくるのである。このような目標を目指しての歯科医師と患者との関係は、歯科養成期間中には聞かれることはなかった。
歯科大学と父兄との関係を長期にわたって持続させることが不可能であるために、歯科学生の基本的な親への教育課程は無数の歯科的事実や、あらゆる診査、診断の重要問題を過剰なまでに説明することで埋まっている。しかも、長期予防計画を強調するため、学生には不必要に多くのウ蝕を治療するように教えられているのである。拡大鏡を手にした教官は、学生が些細な疾患を見逃すといってひどく非難するのである。この疾患の約1/3は処置をせずに長期予防計画のもとで管理することができる。