宝塚随想

歯科医師・山田忠生

武庫川より西で開業したいと思い立ち、今の地で診療を始めて今日にいたる。もうすぐ、半世紀になる。
オフィスの窓からは、伊丹空港を飛び立った飛行機がよく見える。圧倒的な大きさをもったジャンボジェットが無くなったのは、すこし寂しい。阪神淡路大震災から、来年で30年。オフィスの入っているビルは幸いに残ったが、周りの景色は一変した。
宝塚温泉街も壊滅的被害を受け、今、歩いても当時を思い起こすものすらないようだ。宝塚は大きく変わってしまった。記憶も薄れ、あれが寂しいとか、こんなことがあったとかなどという気持ちもないようだ。おそらく、あの約20秒続いた震動のよみがえることの恐怖を、体が拒否して、記憶を消そうとしているのかもしれない。

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