歯科医師・山田忠生
1961年2月、著者は歯内療法の一層優れたホウホウはないものかと、シカゴで開催されたミーティングに出席した。著名な歯内療法学の臨床講義を受け、そこで彼が次のようなことを述べるのを聞いたのである。「あなた方は、前歯や真っすぐな小臼歯だけを治しているとのことですが、一体あなたの免許状のどこに、臼歯の歯内療法を施すには不適格だと書かれているのでしょう。ご存じのように臼歯の方が歯根の多いこと以外に、臼歯と前歯との相違点はないのです。あなた方がしっかりとした測定可能な機械器具を使いさえすれば、85%の成功率で1回の診療時間に充填することができるのです。」彼は、根管治療をするのは1回で良いと決して薦めているわけではない。
そのミーティングに刺激されて、著者は歯内療法のコースを受講することに決めた。雑誌などから5日間のポストグラデュエート・コースを選んだ。受講料の200ドルの小切手を準備しているとき、以前に歯内療法学のコースを受けていたことを思い出したのだった。1年前のことだ。しかし、すっかり記憶から追い払われていたのだった。200ドルの受講料は機械器具類を買いそろえるのに使え、受講のために失う5日間の診療時間は、患者の臼歯を18歯も治療することに充てることができる。